毎日持ち歩くものを、全部黒にした。
バッグの中を開けたとき、余計な色が目に入らない。そのためだけに、EDCを黒で揃えた。
芯の出る量を自分で決める。REG の限定マットブラックは、筆記という行為をここまで静かにする。
筆記時のノイズを、限りなく小さくする。
ステッドラーが REG のコンセプトとして挙げているのはそこで、マットブラックの限定モデルを手にしたとき、それが単なるキャッチコピーではないとわかった。
このシャープペンシルの核心は、芯の繰り出し量を自分でカスタマイズできる機構にある。
どれだけ芯を出すかを自分の筆記スタイルに合わせて設定できる。少し出す人も、多めに出す人も、それぞれの「ちょうどいい」に合わせられる。一度設定すれば、ノックのたびに同じ量だけ出てくる。
その一定性が、書くことへの集中を助ける。
マットブラックのボディは、光を反射しない。
手のひらに収まると存在感が消えるような感覚がある。グリップのローレットは滑らかで、筆記中に指が疲れない設計になっている。芯が紙に触れるときの音も、主張しない。
道具が静かだと、思考が前に出る。
芯の出る量を調整できることは、地味だが大きい。
筆圧が強い人は短めに、軽く書く人は少し長めに。自分の癖に道具を合わせられる。多機能というほど派手ではないが、使う人の習慣に寄せられる設計だ。
この調整は、一度決めると意識しなくなる。意識しなくなるところまで持っていける機能は、良い機能だと思う。使うたびに触りたくなる機構ではなく、使うために消えていく機構だ。
925 35 All Blackが潔さのペンだとしたら、REGは調整のペンだ。
どちらも黒く、どちらも金属軸で、どちらもステッドラーらしい精度がある。ただ、持ったときの気分は違う。925 35は削ぎ落とされていて、REGは内部に仕組みを持っている。
同じ黒い筆記具でも、役割が違う。そこに複数持つ理由がある。
通常の REG は 2025 年に復刻されたモデルで、このマットブラックはその限定バリエーションだ。
4,180 円という価格は、このカテゴリとしては高い部類に入る。それでも選ぶのは、日常的に手が触れる道具に「これでいい」ではなく「これがいい」を選びたいからだ。
限定という言葉には興味がない。マットブラックという仕様に興味がある。
全体がマットブラックで統一されていて、クリップも、リングも、余計な色が出てこない。
925 35 All Black の削ぎ落とした潔さとは少し違う、設計の密度がある黒だ。同じ黒でも、道具の性格が違う。どちらが上ではなく、何を書くか、いつ持つかで使い分けが生まれる。
書くことを、もう少し丁寧に扱いたいと思ったとき、これがある。